今回は、志望動機でよく見かけるミス7選について解説します。
テーマはそのものズバリ「志望動機」。どうして志望動機について考えることが重要なのか。理由はさまざまありますが、何より大きいのは、志望動機が「どこの組織でも十中八九聞かれる」という点でしょう。
私自身、これまで市役所、特別区、県庁、国家公務員と、さまざまな組織を受験してきました。
そのうち、志望動機について聞かれなかった組織はただの1つもありません。つまり、すべての組織で志望動機についてみっちりと質問を受けてきたわけです。
これから皆さんが受けていく組織でも、やはり志望動機は聞かれることになります。
だとすれば、そこでミスはしないほうがいい。そこで今回は、よく見かけるミスを7つに絞り込み、丁寧にご案内していきます。
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①「感情」が見えない
1つ目は、「感情」が見えないというミスです。
志望動機の考え方にはさまざまな型がありますが、ごく素朴に考えれば、受験先の地域を良くしたい・発展させたいというポジティブな思いがベースにあるはずです。
では、なぜそのポジティブな思いが生まれるのか。その地域が好きだから、その地域に魅力を感じているからというのが、その土台になるのではないでしょうか。
典型的には、「自分の地元だから」、あるいは「縁があって愛着が湧いたから、もっと発展してほしい。だから職員になって盛り上げたい」といったものです。
要するに、ベースにあるのは、その地域が好き・魅力を感じているという「感情」なのです。
ところが、多くの受験生がそうした感情を押し出すのではなく、客観的な事実ばかりを羅列してしまっています。
人口、産業、面積など、徹頭徹尾、客観的な事実の羅列になっている志望動機が非常に多いのです。
何がマズいのか。客観的な事実をいくら並べても、そこから志望動機は生まれないからです。
好きだからそこで働きたい、好きだからその地域を盛り上げたい。そうした形で組織を志望するのはごく自然です。しかし、客観的な事実だけから志望動機が生まれることはまずありません。
志望動機を練り上げたとき、どうも客観的な事実ばかりで自分の感情が見えない。そうなっていたら、かなり危険だと考えてください。
小さなものでも構いません。自分の感情が入っているかどうかを、ぜひ気にしてみてください。
②「経験」が見えない
2つ目は、「経験」が見えないというミスです。
先ほど、感情が見えないのはマズいとお話ししました。では、この「感情」は何をベースに生まれるものでしょうか。
明らかに「経験」です。何の経験もないのに、いきなり感情が発生することは考えにくいでしょう。「何かを経験した」→「その経験を通じてある感情が生まれた」というのが自然なストーリーです。
ということは、感情の前段階として「○○の経験をしたことがあって」という部分が非常に重要になってきます。
ところが、この「経験が見えない」「経験がほとんど書かれていない」志望動機がかなり多いのです。
経験が見えないと、面接官や志望動機を読む側からすれば、「この人はどうしてそういう感情が生まれたのだろう」と分からなくなってしまいます。
ですから、自分がしてきた経験を可能な範囲で入れていただきたいのです。
大学生の方なら、「ゼミでこういうことを研究していて」「アルバイトをする中で」「地域のボランティア活動にたまたま参加する機会があって」など、さまざまな経験があるでしょう。
そうしたものを丁寧に盛り込んでください。そして、社会人の方なら、なおさら自分の経験はしっかり入れなければなりません。
大卒程度枠であれ社会人採用枠であれ、社会人が公務員試験を受けるときは、基本線として学生と違って即戦力を求められているからです。
だとすれば、自分の経験を大学生以上にくっきり見せることは、志望動機でも重要になってきます。
もちろん、書ける分量にもよります。ほんの少ししか書けない欄であれば仕方ありません。しかし、ある程度の分量を書ける場合には、社会人の方は特に自分の経験を入れることを意識してください。
③「差別化」を意識しすぎ
3つ目は、「差別化」を意識しすぎているというミスです。
志望動機は重要性が強調されがちなため、多くの方が「自分の完全オリジナルのオンリーワンの志望動機を作らなければ」と意気込んでしまいます。
しかし、まず強調しておきたいのは、完全にオンリーワンの、他の誰とも違う志望動機などというものは存在しないということです。
20代や30代の方であれば、経験していることの幅や中身はそれほど変わりません。つまり、似たり寄ったりのことしか経験していないのです。
特に大学生なら、やっていることは基本的にゼミかサークルかアルバイトでしょう。
だとすれば、よほど突飛なことをしていない限り、原理的に差別化などできません。似たようなことしか経験していないのに、無理に他人と違う形にしようとするから、おかしなことになってしまうのです。
重要なのは、他の人と似通っていても構わないから、自分のストーリー・経験からきちんと志望動機が練り上げられているかという点。そのつながりを意識すべきであって、無理な差別化は考えないほうがよいでしょう。
これはファッションに置き換えると分かりやすいかもしれません。
モテたいと思ってファッションを差別化するとしましょう。ネクタイも、ジャケットも、パンツも、靴も、カバンも、すべて差別化を盛り込む。すると何が起きるか。100%、ますますモテなくなります。
すべてを差別化した結果、ファッション全体の主張がうるさくなるからです。
ファッションで最後まで重要なのは全体のバランス。全体として整合性が取れているかどうかが大事なのであって、個別の差別化を積み上げても、ただうるさくなるだけです。
まったく同じことが志望動機にも当てはまります。「他の人と違う形にしよう」と差別化を積み重ねても、主張がうるさくなるだけで、面接官には何も伝わりません。
内容が他の人と似ていても構わない。自分の中にストーリーがあるか、一貫性があるか、不自然になっていないか。そちらのほうがよほど重要です。差別化を目的とした差別化は、絶対にやらないほうがいい。
あれもこれもと無理に差別化しようとするのは、絶対に間違っています。
差別化を意識しすぎるのではなく、ストーリーとして一貫性があるか、聞いていて自然か。そこにこそフォーカスしてください。
④行政以外でもできる
4つ目は、行政以外でもできるというミスです。
志望動機の型の1つに、「自分は○○をやりたい。それができるのが行政組織だから志望している」というものがあります。私自身、この型を多用していました。
このとき、入口となる「やりたいこと」が、「それ、行政以外でもできますよね?普通に民間企業がやっていますよね?」というパターンが非常に多いのです。
例えば、金融業界から公務員への転職を目指す方に比較的よく見られるのが、「金融教育を積極的にやっていきたい」という志望動機です。
資産の増やし方や守り方についての教育に携わりたいという思いは分かります。しかし私からすると、「それはすでに金融業界がやっていますよね?」と思ってしまうのです。信用金庫も銀行も証券会社も、さまざまな形で資産についての教育を行っています。
なぜわざわざ行政でそれをやらなければならないのか。「無理に行政組織に入らなくてもできるじゃないですか」で話が終わってしまいます。
これは一例ですが、「それは行政でなくてはいけないのか」と疑問に思う志望動機を挙げている方は少なくありません。
やりたいことを志望動機に盛り込むなら、「それは行政以外でもできませんか?」という質問に対して、切り返しができるようにしておく必要があります。
「これは行政でないとできないんです」と言い切れるようにしておく。あるいは「行政以外でもできるかもしれないが、行政でやったほうがより効率的なんです」と説明できるようにしておく。
なぜ行政でそれをやらなければならないのか、という理屈づけ・ロジック。ここが甘いパターンが非常に多いので、やりたいことに触れるのであれば、理屈づけをしっかり固めておきましょう。
⑤規模感を間違えている
5つ目は、規模感を間違えているというミスです。
この記事を読んでいる方の多くは、市役所を受験されると思います。
そのとき、市役所の志望動機なのに、やたらと「制度設計」や「政策」に軸足が置かれすぎているものをよく見かけます。
しかし、制度設計や大規模な政策は、どちらかといえば県庁や国家といった規模感の組織の話です。
もちろん市役所にもさまざまな規模があり、大きな組織であればそうした内容が間違いではないケースも大いにあります。しかし、比較的小さめの組織を受けるのに、制度設計や大規模な政策をメインにびっしり書くのは、明らかに規模感が合っていません。
逆もまた然りです。
国家公務員を受ける方の志望動機を眺めてみると、やたらと「地域密着」や「丁寧な窓口対応」といった文言が並んでいることがあります。
しかし、地域密着や丁寧な窓口対応は、主に市役所での話。国家の場合は大規模な制度設計や一国レベルの政策に携わることになるわけですから、「規模感がズレている」ということになってしまいます。
志望動機に書かれている文言や用語の規模感が受験先とズレていると、明らかに印象はネガティブな方向に引っ張られます。
受ける組織と志望動機の文言との間で、規模感のズレが起きないように。この点はぜひ意識してください。
⑥全てを話そうとしている
6つ目は、全てを話そうとしているというミスです。
組織によっては、面接カードの志望動機欄のボリュームが非常に大きいことがあります。その面接カードを用いて面接が進むわけですが、このとき、自分が書いた志望動機を丸ごと全部話そうとする方がかなり多いのです。
しかし、分量の多い志望動機を面接本番で丸ごと話そうとするのは明らかに間違っています。
自分の話が長くなりすぎるからです。
面接カードの分量がいかに膨大でも、面接本番では、その中から重要なものだけをピックアップし、取捨選択した上でコンパクトに話す必要があります。
分量が多いと原稿をすべて暗記しようとする方がいますが、その必要はありません。
何より、すべてを話そうとすると、面接官からすれば情報量が多すぎて処理しきれないことになりかねません。
繰り返しになりますが、分量の多い志望動機は、特に重要なものだけを自分なりにピックアップし、コンパクトに話す。この感覚をぜひ持ってください。
⑦気持ちが作り込まれていない
最後の7つ目は、気持ちが作り込まれていないというミスです。これも面接に入ってからの話になります。
書かれている志望動機は内容的におかしくないのに、実際に話してもらうと、どうも気持ちが乗っていない、まるっきり棒読みになっている。そうした方が少なくありません。
何がマズいのか。いくら文言が良くても、感情が乗っていない(少なくとも乗っているように見えない)と、面接官から「本当に思っていることではないのだろうな」と疑われてしまうからです。
内容的に整合性の取れた、ストーリーのある志望動機を作ることは大事です。しかし、最後の最後は気持ちを乗せなければなりません。
面接に限らず、およそ人前で話をするときには、自分の話に感情を乗せられるかどうかが極めて重要です。
実際、歴史に名を残す偉大な演説家は、ほとんど例外なく「気持ちを乗せる」ことにフォーカスしたトレーニングを積んでいます。
具体的なエピソードを1つ紹介しましょう。演説の名手として非常に有名な人物に、アドルフ・ヒトラーがいます。

『ヒトラー演説 – 熱狂の真実』高田博行/中央公論新社
ヒトラーはスピーチがうまかった、演説が上手だったという話は、どこかで耳にしたことがあるでしょう。
確かにヒトラーは演説の名手でしたが、人前で話をする前に、自分の感情を作り込むことにも手を抜かない人物でした。
こんなエピソードが残っています。
ある日、ヒトラーが側近たちを招いて公邸でパーティーを開いていたとき、関係が悪化していたイギリスの外交官が面会を求めていると執事が伝えに来ました。
ヒトラーは「私は今機嫌がいいから、少し待たせておけ」と答えます。そしてしばらくの間、黙ったままソファーに座り、だんだんと顔が赤黒くなっていく。
何をしていたのか。怒りの感情を作り込んでいたのです。顔色が紫になったと思った瞬間、ヒトラーは席を立ってイギリスの外交官と面会しました。
戻ってきたヒトラーはケラケラ笑いながら、「あの外交官は私がカンカンに怒っていると思っている」と言い残したそうです。
つまり、ヒトラーほどの演説の名手であっても、話す前の段階で気持ちを作り込む・感情を作り込むという作業をきっちり入れていたわけです。
だとすれば、私たちのような一般人は、なおさら気持ちを作り込むことをしっかりやらなければなりません。
では、どうすればよいのか。ここで効いてくるのが「まちを歩く」ことです。
受けようとしている市や県に足を運ぶと、「ここはいいな」「こういうところなんだ」と魅力を発見できます。
魅力を発見しているからこそ、「ここに本当に入りたいと思っています」と話したときに、感情が乗ってくるのです。
私自身は、まち巡りの重要性は知識を得るためにあるとはまったく思っていません。
まち巡り・まち歩きが重要なのは、感情を乗せるために明らかに有効な手段だから。理由はこの1点に尽きます。
自分が話をするときに感情が乗っているか。つまり、話す前の段階で感情が練り上げられ、作り込まれているか。この点にも今一度注意を向けてみてください。
今回は志望動機でありがちなミスについてお話ししました。
繰り返しになりますが、志望動機は市役所でも県庁でも国家でも、面接で必ず聞かれます。
今回の注意点を参考に、自分の志望動機をもう一度練り上げてみてください。
ちなみに、志望理由で固めておきたいポイントについては、下記の記事で詳しく解説しています。

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