【相談内容】
筒井先生に教えていただきたいことがあります。出願をする市の志望動機をどのように書いたらよいのか、ということについてです。
志望するにあたり、その市役所の取組等を調べ、自分が惹かれる、あるいはよいなと思う政策について記述しようかと考えています。
しかし実際に書こうとすると、「これはその市でなくとも他の自治体でも出来ることではないか?」といった他にも通ずるような文章になってしまい、記述が一向に進みません。
また、違う視点から考えてみても、例えば通学していた高校があり馴染みがあるから、というような薄い動機しか出てきません。この無限ループにハマってしまい、どの市に対しても志望動機で書き詰まってしまい頭を抱えております。
そこで、志望動機を書くコツ等どのように書いたらよいのかを教えていただけたら大変嬉しいです。お力をお貸しいただけないでしょうか。
【はじめに】
志望動機は、多くの受験生が悩むところでしょう。私なりの見解をお伝えします。
👇YouTubeでの解説は画像をクリック👇
取組の違い
まず、ご質問にある「その市でなくとも、他の自治体でもできる取組ではないか」という点です。これは、おっしゃるとおりだと思います。
そもそも、特定の市でなければできない取組は、原理的にほとんどありません。政令指定都市はともかく、基礎自治体はどこも似たようなことをしている、あるいはできるからです。
ですから、特定の市でなければできないことは、まずないと考えたほうがよいでしょう。政策や取組を理由に「ここを選んだ」と組み立てるのは、あまり筋がよいとは思いません。
とはいえ、私自身も政策を志望動機に書いたことがあります。
東京都内のある市役所を受けたときには、「この市は教育に力を入れていて、そこに魅力を感じた。自分もその取組に加わりたい」と書きました。
当然ながら、これには質問者さんの文面にあるような「他の市でもできるのではないか」という反論がありえます。
ただ、その反論には切り返せます。他の市でもできるかもしれませんが、その市でもできることに変わりはないからです。
「この市はこういう方向性を持ち、例えば教育に力を入れているので、自分もそこに参加して流れを加速させたい」と述べるのは、まったく不自然ではありません。反論への答えとしても十分に成り立ちます。
縁・馴染み
それでも面接官から「他の市でもできますよね」「他の市のほうがいいのではないですか」と詰められたら、どう切り返せばよいのでしょうか。
私が実際にどう答えたのかをお話しします。その切り返しは、最終的には「縁」や「なじみ」になると考えています。
他でもできるかどうか、ここにしかない独自のものがあるかどうかではありません。最後の最後に、その市役所、その組織を選んだ動機は、縁やなじみといった、とてもエモーショナルなところに行き着くはずです。
これに関連して、ご質問には「例えば通学していた高校があり馴染みがあるから、というような薄い動機しか出てきません」とありました。
でも、まさにそれでよいのです。
市役所は日本中にたくさんあります。質問者さんにも、この記事を読んでいる受験生の皆さんにも志望先の市役所があると思いますが、その近隣にも市役所は数多くあるでしょう。
その中から「なぜここを選んだのか」と聞かれたら、さまざまな理由があるにせよ、最後は縁やなじみに落ち着くのではないでしょうか。先ほどお伝えしたとおり、市役所がしていることはとても似通っています。
A市もB市もC市も、おおむね同じようなことをしているわけです。だとすれば、そこを選んだ理由は、なじみや縁に落ち着くはずです。
お茶に置き換えても同じことがいえます。綾鷹、伊右衛門、生茶、お〜いお茶は、どれもお茶です。
私は綾鷹が一番好きですが、なぜ綾鷹を選ぶのかと聞かれたら、正直なところ「一番飲み慣れていて、なじみがあるから」です。もちろん、味の違いも多少はありますが。
本当の理由は、そういうところにあります。ですから、なじみや縁があることを前面に打ち出せば、それで構いません。
ある市にはなじみがあり、他の市にはなじみがないのなら、なじみのあるほうを選ぶのは当然です。
入庁後に同じような仕事をするのなら、なじみのない場所よりも、なじみのある場所で働きたいと思うのが人の自然な気持ちでしょう。
縁やなじみに焦点を当ててはいけない、という指導も少なくありません。
しかし私は、その考え方は間違っていると思います。私自身、市役所の面接では縁やなじみを前面に出し、それで最終合格できました。まったく問題ありません。
縁がない場合
ただ、縁やなじみについて最も多くの受験生が悩むのは、「そもそも縁やなじみがない」というケースでしょう。何かしらはあるとしても、薄いと感じる人もいるはずです。
では、私自身はどうしたのか。自分の話をさせてください。
先ほど触れた東京都内のある市を受けた理由は、正直に言えば「近かったから」です。当時通っていた大学院から比較的近いのが、その市でした。
就職してからも、一人暮らしをしていたマンションから通えるだろう、という考えもありました。
とはいえ、「近いから選びました」というだけでは弱いと感じていました。近くて通いやすいという気持ちは面接でも伝えましたが、それを志望動機の中心に据えるのは違うと考えていたのです。
そこで思いついた解決策はシンプルでした。縁やなじみがないのなら、つくればよいと考えたのです。
私がしたのは、その市に住んでいる恋人をつくることでした。といっても、実際に恋人をつくったわけではありません。もちろん、人体錬成をしたわけでもありません(笑)
架空の恋人を、頭の中でつくったのです。恋人がその市に住んでいて、結婚も考えているとなれば、その市を選ぶ大きな理由になります。
「恋人にとって大切な土地なので、自分にとっても大切な土地です」と言えるわけです。
ただ、そう話すとなれば、面接で「普段はどんなところへ出かけるのですか」と聞かれることは当然想定できます。そこで私は、その市のデートスポットなどに一つずつ足を運びました。
たとえば、その市の有名なお菓子屋さんへ行き、お菓子を食べてみる。「おいしいね」と言いながら、一人で。
有名な公園にも行き、ベンチに腰掛けてのんびり過ごしました。一人で。
駅前には、カップルに人気の有名な喫茶店もあります。そこでコーヒーやケーキを注文し、「おいしいね」と言いながら味わいました。もちろん一人で。
そうしたことを、いろいろと続けました。すると不思議なもので、本当に恋人がいるかのような気持ちになってきたのです。
何より、その市への愛着が湧いてきたことが大きな収穫でした。
しばらくの間、私はその市のことを本気で好きになっていました。面接で「どんなところに行かれるのですか」と聞かれたときも、「駅前のあの喫茶店に」「なるほど」といったやりとりができました。
その結果、最終合格を勝ち取ることができたのです。
恋人をつくれとも、架空の恋人をつくれとも言いません。ただ、気持ちをつくり込んで面接に備えることは、とても大切だと考えています。
「入庁後に恋人のことを聞かれたらどうするのか」と思う方もいるかもしれません。そのときは「入庁までの間にいろいろあって別れてしまった」と言えばよいのです。
相手には確かめようがないので、まったく問題ありません。
もちろん、うそは基本的にいけないことです。私が唯一、気持ちをつくり込むためにこうしたフィクションを話したのが、この場面でした。全員におすすめする方法ではありません。
気持ちを作り込む
こうして気持ちをつくり込むことは、志望動機だけでなく、面接全般でとても重要です。スピーチや弁論の世界で知られている話を一つ紹介します。
アドルフ・ヒトラーの名前は、皆さんもご存じでしょう。

『ヒトラー演説 – 熱狂の真実』高田博行/中央公論新社
希代の演説家として知られる人物ですが、ヒトラーにはこんな逸話が残っています。
ヒトラーが公邸で側近を招いてパーティーを開いていたときのことです。イギリスの外交官が面会を求めて来ている、と召使いが伝えに来ました。
するとヒトラーは「今は機嫌がよいから、少し待たせておけ」と言ったそうです。そしてソファーに座って目を閉じると、顔がだんだん赤黒くなっていったといいます。
怒りの感情を、その場でつくり込んでいたのです。
顔が紫色になったかと思うと、ヒトラーはパーティーの参加者に「失礼」と言って部屋を出ていき、外交官と会ってから戻ってきました。そして笑いながら「あの外交官、私がカンカンに怒っていると思っているぞ」と言った、というエピソードです。
この話から分かるのは、何かを話す前には、まず気持ちをつくり込まなければならないということです。
縁やなじみを話したいのであれば、その言葉に説得力を持たせるために、まず自分自身が熱を帯びている必要があります。
架空の恋人をつくれとまでは言いませんが、実際にその町へ足を運んでみると、気持ちは自然とできあがっていきます。
話す内容にも必ず説得力が出てきますので、ぜひ試してみてください。
まとめ
まとめると、政策や取組だけで「この市を選んだ」と組み立てるのは、あまり筋がよくありません。どの市でも、ある程度似たようなことができるからです。
最後の最後に「なぜそこを選んだのか」を支えるのは、縁やなじみではないでしょうか。
なじみがないのであれば、面接までに縁やなじみをしっかりつくり込んでおくとよいでしょう。
志望動機に悩む方は多いと思いますので、また何か悩みが出てきたら、いつでもご質問ください。
なお、合格者が実際に話した志望動機(市役所編)については、下記の記事で詳しく解説しています。

✅面接対策専門チャンネルの紹介
公務員試験ゆる面接chでは、元公務員&元TAC講師&全国弁論大会最優秀賞の経験を活かし、公務員試験の面接対策について専門的に情報発信を行っております。
継続的に視聴するだけで、面接で重要となるマインドセットを手に入れることができるでしょう。
詳細は下記のボタンをクリック!


